予告編

イントロダクション

17年前、49歳で突然この世を去った稀代のドキュメンタリー作家、佐藤真。映画史に燦然と輝く傑作の数々がいま蘇る
暮らしの中にある もうひとつの世界の入り口言葉にからめとられる前の 世界の感触

90年代〜00年代にかけて数々の傑作を⽣み出したドキュメンタリー映画作家、佐藤真。彼は社会運動と映画を=(イコール)にしてきた⽇本ドキュメンタリーの系譜とは異なる独⾃のスタイルを探求した。ありきたりの「⽇常」を撮り、その中に潜むもうひとつの世界への⼊り⼝を探し、言葉にからめとられる前の世界の感触を伝えた。2007年に突然この世を去ったが、その革新的な手法と映画哲学は高く評価されており現代映画作家を始め多くの人たちに今なお影響を与え続けている。

佐藤真

佐藤真

1957年⻘森県⽣まれ。東京⼤学⽂学部哲学科卒業。
⼤学在学中より⽔俣病被害者の⽀援活動に関わる。1981年『無辜なる海』(⾹取直孝監督)に助監督として参加。1989年から新潟県阿賀野川流域の⺠家に住み込みながら撮影を始め、1992年『阿賀に⽣きる』を完成。ニヨン国際ドキュメンタリー映画祭銀賞など、国内外で⾼い評価を受ける。以降『まひるのほし』(98)、『SELF AND OTHERS』(00)、『花⼦』(01)、『阿賀の記憶』(04)『エドワード・サイード OUT OF PLACE』(05)など映画監督として数々の作品を発表しながらテレビ作品の編集・構成の他、映画論の執筆など多⽅⾯に活躍。京都造形芸術⼤学教授、映画美学校主任教師として後進の指導にも尽⼒した。2007年9⽉4⽇逝去。享年49。

コメント

50音順・敬称略

エドワード・サイードの「不在」の風景のなかを、ゆったりと美しいカメラが、いつまでも追ってゆく。パレスチナ、イスラエルの苦しみのひだひだが照射される。人々の色濃い思い出を横切るサイード。そしてサイードの「希望」が私らの頭上に現われる。
――『エドワード・サイード OUT OF PLACE』より

大江健三郎(作家)

佐藤真の映画ではカメラが人物の前に回ることが多い。対立でもなく、対峙でもなく、被写体の前で立ちすくむカメラ。そんな印象を受ける。答えのない過酷な生を、人々の声が和らげる。佐藤真はインタビューすることを恐れない。インタビューの一つ一つが説明に堕することがないのは、人の声自体を「できごと」として捉える感性ゆえだろう。一度お会いしたかった。

濱口竜介(映画監督)

生きていると佐藤真監督の映画のことを不意に思い出す。阿賀の景色、花子の笑顔、パレスチナの難民たち。それら映像の記憶の断片はノスタルジーから遠く現在と生々しく接続している。

深田晃司(映画監督)

なぜそう撮ったのか。なぜそう繋いだのか。なにを撮らずにいたのか。なにを撮れなかったのか。あるショットから次のショットへ、そのすべての変化が、新たな発見として、新たな応答として、そして新たな問いとして迫ってくるように受け止めています。自分なりに考えてきたつもりでも、いままた見直すと、まだまだぜんぜん受け止められていないことに気づき、新たな問いばかり見つかります。レトロスペクティヴの開催を嬉しく思っています。

三宅唱(映画監督)

上映作品

まひるのほし Artists in Wonderland

うっかりすると我が⾝も私の常識もその刃先でスッパリと切りきざまれてしまう。(佐藤真)
監督:佐藤真|製作:山上徹二郎/庄幸司郎|撮影:大津幸四郎|撮影監督:田島征三|録音:久保田幸雄
1998/93分/カラー/DCP(4Kレストア)/スタンダード
UDCAST「字幕・音声ガイド対応」※一部劇場非対応
まひるのほし Artists in Wonderland
©1998 「まひるのほし」製作委員会
まひるのほし Artists in Wonderland
表現の快楽、芸術表現の根底に迫る傑作

本作に登場する7⼈のアーティストは知的障害者と呼ばれる⼈たちでもある。兵庫県⻄宮の武庫川すずかけ作業所、神奈川県平塚の⼯房絵(かい)、滋賀県信楽の信楽⻘年寮を舞台に、それぞれ独特のこだわりを⽣かして創作に取り組む彼らの活動を通し、芸術表現の根底に迫る。

花子 Hanako

くり返される当たり前の日常が、すでにひとつの確固たる〈表現〉として屹立していると私には思われた。(佐藤真)
監督:佐藤真|製作:山上徹二郎|撮影:大津幸四郎|音楽:忌野清志郎/ラフィータフィー|録音:弦巻裕|編集:秦岳志
2001年/60分/カラー/DCP(4Kレストア)/スタンダード
UDCAST「字幕・音声ガイド対応」※一部劇場非対応
花子 Hanako
©2001 シグロ
花子 Hanako
アートを⼊り⼝にしたこの映画の出⼝には家族の⽇常が広がっていた。

京都府の南端、⼤⼭崎町に暮らす今村花⼦は、⼣⾷の残り物を素材にした「たべものアート」の作家である。このユニークなアートの発⾒者である⺟・知左は、6年に渡って花⼦の「作品」を写真に撮り続けてきた。一人のアーティスト今村花子と、彼女を取り巻く家族の物語。

エドワード・サイード OUT OF PLACE Out of Place: Memories of Edward Said

そこにサイードが終生希望を託そうとした未来が見えると思った。(佐藤真)
監督:佐藤真|撮影:大津幸四郎、栗原朗、佐藤真|企画・製作:山上徹二郎|協力プロデューサー:ジャン・ユンカーマン|整音:弦巻裕|編集:秦岳志
2005年/137分/カラー/DCP(4Kレストア)/スタンダード
UDCAST「字幕・音声ガイド対応」※一部劇場非対応
エドワード・サイード OUT OF PLACE Out of Place: Memories of Edward Said
©2001 シグロ
エドワード・サイード OUT OF PLACE Out of Place: Memories of Edward Said
パレスチナの窮状を、真実を、和解と共⽣の地平を、探る。

パレスチナの窮状を全世界に⽰し、生涯にわたりパレスチナ問題に向き合い続けたエドワード・サイード。彼の不在をみつめ、イスラエル・アラブ双⽅の知識⼈たちの証⾔を道標にサイードが求め続けた和解と共⽣の地平を探る映画の旅。

特別上映作品

阿賀に⽣きる Living on the River Agano
©1992 阿賀に生きる製作委員会

阿賀に⽣きる Living on the River Agano

監督:佐藤真|製作:阿賀に生きる製作委員会|撮影:小林 茂|音楽:経麻朗|録音:鈴木彰二
(1992年/115分/カラー/DCP/スタンダード)
⼈間の命の讃歌をまるごとフィルムに焼き付けたドキュメンタリー映画の⾦字塔。

新潟県を流れる阿賀野川。新潟⽔俣病の舞台ともなった川。川筋に住む⼈びとは愛情を込めて「阿賀」と呼ぶ。七⼈のスタッフがその川筋に住み込み、そこに住む⼈びとを三年間にわたって撮影した。 阿賀に暮らす⼈と⾵⼟をまるごとフィルムに収めた⻑編デビュー作。

阿賀の記憶 Memories of Agano
©2004 カサマフィルム

阿賀の記憶 Memories of Agano

監督:佐藤真|撮影:小林 茂|録音:菊池信之| 音楽:経麻朗|編集:秦岳志|プロデューサー:矢田部吉彦|製作:カサマフィルム (2004年/55分/カラー/DCP/スタンダード)
不在と⼈と⾵景。過去と現在を結びつける映画の不思議さ。

『阿賀に⽣きる』から10年。映画に登場した愛すべき⼈びとの多くはこの世を去ってしまった。今は荒れ果ててしまった⽥んぼや、主を失った囲炉裏などにキャメラを向け、⼈々が残した痕跡に記憶を重ねていく。過去と現在を繊細かつ⼤胆に⾒つめた詩的ドキュメンタリー。

SELF AND OTHERS
©牛腸茂雄

SELF AND OTHERS

監督:佐藤真|撮影:田村正毅|録音:菊池信之|音楽:経麻朗|声:西島秀俊|製作:堀越謙三|製作協力:映画美学校|製作:ユーロスペース
(2000年/53分/カラー/DCP/スタンダード)
36歳で夭逝した写真家、牛腸茂雄。遺された草稿や⼿紙と写真そして⾁声。

「もしもし、きこえますか。もしもし、きこえますか……」写真家の評伝でもない作家論でもない、ドキュメンタリー映画の新たなイメージを提⽰する衝撃の映画。孤独な命が全世界へ向けて声を発しているような⽣々しさが胸を打つ。
※2024年レストア版を渋谷ユーロスペースほか全国公開予定

劇場情報

バリアフリー上映のご案内

UDCast

『まひるのほし4K』『花子4K』『エドワード・サイード OUT OF PLACE 4K』は日本語字幕付きで上映します。また、『UDCast』方式によるバリアフリー音声ガイドに対応いたします。

  • ・『UDCast』の詳細は、こちらからご覧ください。
    https://udcast.net/howtouse/
  • ・音声ガイドをご希望の方は『UDCast』アプリをインストールしたスマートフォン等の携帯端末に、作品のデータをダウンロードして、イヤホンを接続してお持ちいただければ、全ての上映劇場、上映回でご利用いただけます。

なお、『エドワード・サイード OUT OF PLACE 4K』の音声ガイドでは、字幕の読み上げ音声が合わせて再生されます。字幕読み上げのみのメニューもございます。

2024年8月25日現在

北海道・東北



地域 劇場 電話番号 公開日
宮城 フォーラム仙台 022-728-7866 11/15(金)-11/21(木)上映終了

関東

地域 劇場 電話番号 公開日
東京 目黒シネマ 03-3491-2557 11月17日(日)~11月20日(水)上映終了
東京 下高井戸シネマ 03-3328-1008 10/5(土)~10/18(金)上映終了
東京 シネマ・チュプキ・タバタ 03-6240-8480 10月17日(木)~10月29日(火)上映終了
東京 Bunkamuraル・シネマ 渋谷宮下 03-3477-9264 5月24日(金)~上映終了
神奈川 横浜シネマリン 045-341-3180 6月15日(土)~上映終了
神奈川 シネコヤ 0466-33-5393 8/23(金)~9/8(日)上映終了
千葉 キネマ旬報シアター 04-7141-7238 7月13日(土)~7月19日(金)上映終了
栃木 宇都宮ヒカリ座 028-633-4445 5月24日(金)~上映終了

中部

地域 劇場 電話番号 公開日
長野 上田映劇 0268-22-0269 7月5日(金)~上映終了
新潟 シネ・ウインド 025-243-5530 8/31(土)~9/13(金)上映終了
愛知 ナゴヤキネマ・ノイ 052-734-7467 7/21(日)~8/2(金)上映終了

関西

地域 劇場 電話番号 公開日
大阪 テアトル梅田 06-6440-5930 5月24日(金)~上映終了
京都 京都シネマ 075-353-4723 5月24日(金)~上映終了
兵庫 シネ・リーブル神戸 078-334-2126 5月24日(金)~上映終了

中国・四国

地域 劇場 電話番号 公開日
広島 横川シネマ 082-231-1001 9月28日(土)〜10月11日(金)上映終了
山口 山口情報芸術センターYCAM 083-901-2222 12月4日(水)~15日(日)

九州・沖縄

地域 劇場 電話番号 公開日
福岡 KBCシネマ 092-751-4268 7月5日(金)~上映終了
福岡 福岡市総合図書館映像ホール・シネラ 092-852-0600 2025年1月8日(水)~1月19日(日)
鹿児島 ガーデンズシネマ 099-222-8746 6月17日(月)~22日(土)上映終了